火ノ鳥山の渇人
目の前の木に手をかけ、頭をくっつけ下を向く。

………どうする。

どうする…て何をだ?

ロズの村に行くか、この山に残るかって事だよな。

ロズの家族だから良い人達だろうけど、こんな山から降りてきた記憶喪失者を受け入れてくれるか?仮に受け入れてくれても村の人間は?俺なんて他人だ……肝心のロズは兄弟に付きっきり。
じゃ1人山に残る…そんなの考えられない!くそ!!

触っていた木が俺の背丈程に縮んだ。俺の気持ちを反映するかのように、法力が木に流れ、形を変えていく。

いっそロズの目、元に戻してしまうか。不安定な力だからとか適当な理由つけて、寝てる隙に。

ガン!!

背丈程の木に頭をぶつけた!

俺は何て事を…ロズが居なければずっとあそこで死んだように生きてたんだぞ。救われたんだ俺は!!

……でも

でも俺だってロズの闇に光を与えたんだ。

法力がまた俺の感情にそって木を禍々しい姿に変えてく。枝はクネクネし、葉は真っ黒く染まっている。

視力を奪うとまでいかなくても、例えば村に通じる道を塞ぐとか、村自体を移動させるとか。

何、この力があるんだ、どんな事だって出来る。俺は……

ギギギギ…

いっそ激しく木がうねり出した瞬間、目の前に火の玉が、ボッボッボと俺を囲むように現れた。火の玉が5つ程になった時、火の玉から羽のようなものか出てきた。これは鳥だ。俺が呆気に捕らわれていると、鳥となった火の玉は突然俺を襲ってきた!
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