火ノ鳥山の渇人
「私の家族はね、とても貧乏で両親共に働いているの。兄弟は6人いて1番上が私で、帰りが遅い両親の変わりに私が下の子達の世話をしていたの。」

ロズは遠い昔を思い出してるような表情をしている。俺は何だかまだイライラしている。

「家出しちゃったからさ、みんな心配してるかな~って、置き手紙は置いてきたけど……。1番下の弟はね、まだ3才なの、あの子私がおぶんないと寝ないからな~泣いて目腫らしてなきゃいいけど、ご飯もちゃんと食べてるかな。」

「……なんで家出したの?」

ロズは両手で目を覆うように隠した、また泣いてるのか?一呼吸置いて口を開いた。

「そりゃね、家出なんかしたくなかった、小さな村でその中でも貧乏だったけど、両親は仲良かったし、自分の時間はなかったけど、兄弟はみんな協力的で良い子達だった…」

「だから家出の理由!」

「………目が見えないの…」

「は?いや何それ、どういう意味?」

「どんどん視力が落ちて、最後には失明する、そういう病気なの。最近はもうほとんど見えなくなったわ。」

「いやいやうそだろ?本気で言ってるの?」

「ええ。本当の話。だから家を出たの。目が見えなくちゃ弟や妹達の世話も出来ない、だからって働く事も出来ない。私は自分の家族を心から愛してる。迷惑をかけたくなかった。」

俺は何も言えないで話を聞いている。

「この山に、神様がいるなら目を治して欲しかったし、悪魔がいるなら私を消してほしいと思った、けど居たのはほっぺに2本の傷がある、記憶喪失の男の子だったけど…フフフ。」

「わ、悪かったな!」

ロズが少し笑ったから悪態をつけた、正直、失明の話は半信半疑だけど、最近のロズは様子がおかしかったから、以外と早く納得できた。それと同時に今頭に凄く良い予感がした。

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