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山のような巨木を再び振り返る。
鳥たちの姿が目に入った。
さっきも惚けるように見ていたその光景をしっかりと目に焼き付けて、うさ耳フードの男に向き直る。


「あの」
「ん?」
「ついさっきまで私のいたところでは、ドラゴンは架空の生物でした」
「は?」


真顔で言うと、男は口をぽかりと開けた。
茅野は後ろを指差して、続ける。


「あんな首が二つある鳥も、ワシより大きい蝶なんてものもいませんでした」
「え?」


それから、霧だとばかり思っていた、至るところにかかっているもやを指差す。
よく見るとそこには、小指の先ほどしかない白いものが、ころころふわふわぴょこぴょこと蠢いていた。


「こんなミニチュアサイズの、ものすごい数の鳥だって、見たことも聞いたこともありません」
「いや、お前、なに言ってんだ」


男は眉を寄せて、変人を見る目で茅野を見る。
だが茅野にとっては、この景色も世界もそのものすべてがもはや、“変”としか言いようのないものだったのだ。


「たぶん、私、違う世界から来たみたいです」
「……は?」


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