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「ああ、はい、すいません」


相変わらずのトーンの低い声で言うと、条は微笑んだまま鼻で溜め息を吐いて、体を離した。


「ほんとからかい甲斐ないね、茅野ちゃんは」
「はあ、それは……すいません」


条の軽口に対する女子職員の反応は、たいてい満更でもなさそうに頬を染めるか、興味のない人は、適当にあしらって流すか。
真顔でまともに対応するような茅野の反応は、新鮮だったらしい。

はじめのうちこそ面白がってよくちょっかいを出してきていたが、さすがに一週間も経てば飽きたのか、こうして戯れに近づいてくることは激減していた。
やはりもっぱらの遊び相手は、一番過剰に反応する森らしい。
つまらなそうに片方の眉を跳ね上げると、すぐににやりと笑って森とピーキーの方へ向かった。


「ピーキー次ブラッシングでしょー。森にブラッシングして欲しかったら、いい加減俺のこと目の敵にするのやめてよね」
「な、なんでですか……?」
「なんでも。ほら、この子がどうなってもいーの?」
「きゃあああっ!?」


森を突然後ろから羽交い締めにして、ピーキーに唸り声をあげさせている。
やはりピーキーが条に懐かない理由は、森への接し方にある気がしてならなかった。


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