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茅野がここへ来て最初の日に会った数人の中に、条と森もいた。
真顔で自分は異世界から来たみたいだと言い放った茅野に、ラビは困り果てて、とりあえず事務所へ連れ帰ったのだ。

茅野が本当にここではない世界から来たらしいとわかると、まず最初に彼らがしたのは、帰る方法を考えることだった。
そしてそれは、今なお続いている。


「帰る方法もさっぱりだもんねー」


軽い調子で言った条は、頭を低く下げているピーキーの、顔の横に立った。
顎をブラッシングしてもらうのが好きらしく、茅野がブラシの場所を変えようとすると、頭を動かしてそれを阻止しようとするのだ。
おかげで茅野はかれこれ二十分も、彼の細い顎をがしがしと撫で続けている。

そんなピーキーは条が隣に来たことに気付くと、煩わしそうに細く目を開けたが、すぐにまた閉じてしまった。
森と自分が嫌がることさえしなければ、どうでもいいらしい。

条がピーキーの顔に近寄ったのは、角を見るためだった。
ドラゴンの角は成長と共に長く太く伸び、折れることは滅多にないらしい。
成長具合と共に体調の確認をするのも、角の付近だ。
体調不良は人間と同じように皮膚の薄い部分に表れるので、鱗のある口の周りや、角の根本をチェックするのだそうだ。


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