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「ラビさん、色んなゾーンに行ってるみたいだから、そういうのないのかと思ってました。副園長だし」
「まあね、一応全体見てるよ。でも担当の他にも飼育員は沢山いて……ほら、条や森は腕章してるだろ」
そう言われて茅野は条の方へ目を向けたが、彼が上半身にきちんと袖を通していないのを見ると、森の方へ顔を向けた。
確かに、緑色に白の細いラインが三本入った腕章を、右腕につけている。
「あれをつけてない、いわゆる平の飼育員みたいな感じだな、必要に応じて各ゾーンの補助に行く人たちがいるんだよ。今の茅野も、その見習い」
ラビに視線を戻した茅野は、うんうんと頷く。
事務所に出入りする茅野が覚えきれないほどのツナギ姿の人たちは、その平飼育員、ということなのだろう。
皆茅野と同じ、薄い黄色のツナギだ。
「まあ、水のゾーンなんかはほとんどウェットスーツだし、区別なんてあってないようなものだけど。でも担当飼育員は俺たちの他に全部で七人しかいないから、顔で覚えられるだろ」
「はい」
「紹介は遅くなると思うけど……それぞれ個別に小事務所があって、緑のゾーン以外はだいたい皆そっちにいるから」
「山のゾーンとかは遠いからねえ、さすがに」
「へえ……」
条の言葉に、茅野は辺りを見渡す。
樹のゾーンだけでさえ、檻の反対側が見えないほどに広大なのだ。
島全体ではどれほどあるのか、想像もつかない。
数字では聞いたが、まだ単位を覚えられていない茅野には、いまいちぴんとこなかった。