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「だから、普段は日に二回の定時報告があるだけで、担当がこっちの事務所に来ることはほとんどないんだよ。水と熱帯なんかはわりと近いから、今度見学がてら顔合わせに行くか」
「はい」
茅野はもう一度頷く。
それから、ラビの言葉にあった『定時報告』という単語に、首を傾げた。
ここへ来てから、連絡手段の類を一つも見ていないことを思い出したのだ。
事務所には電話も置いていないようだし、茅野のリュックサックに入っていた携帯電話は、当然のように圏外だった。
パソコンらしき物ももちろんない。
「報告って、何でしてるんですか? 連絡手段というか」
「ん? ああ、メールバードがいる」
「メールバード……?」
伝書鳩のようなものだろうか、と茅野は考えた。
ずいぶん古風だ。
古風、というのは茅野にとっての常識ではなく、単純に、この世界の科学技術の水準から考えてのことだった。
車のようなものはあるし、静電気を利用した電化製品もいくつも見た。
茅野のいた世界とは使うエネルギーがそもそも違うために、似たようなとまではいかないが、遜色ない科学的進歩は遂げているように思える。
それなのに通信手段だけがほとんど手付かずというのは、不自然な気がしたのだ。
(……でも、名前が鳥だからって本当に鳥とは限らないか)
そう考え直して、茅野は傾げた首を元に戻した。