執事の戯言

やっぱりな。


今の時間帯だと、鬼長がここにいるだろうとは思っていたんだ。


長々しいお説教に、お嬢様も「すみません…」と大人しく言うことを聞いている。


鬼長……じゃなくて、斎藤さんは礼儀作法のプロフェッショナルな方で、この家に使えて70年近くはなるベテランだ。


今は亡き敬様からお仕えしてきたメイドであるからに、こーいったことにはお嬢様であろうが旦那様、奥様であろうが、容赦なく説教できてしまう。


「まぁまぁ、良いじゃないですか。
多分、璃愛がここまで怒っている理由は
私にあるのだし、許してやってくれないか?」


旦那様の優しい一言で斎藤さんもため息を放ち、やれやれといった顔で旦那様を見た。


「…分かりました。
旦那様はお嬢様を甘やかし過ぎですよ」


「可愛い一人娘だからね。
厳しくするのは、斎藤さんだけで
十分だと、僕は思ってるんだけど」


旦那様は斎藤さんのことを深く信頼なさっている。


だからこそ、全てを彼女に任せているのだ。


「“善お坊っちゃま”には、
何年経っても敵いませんね」


あえて昔の呼び名で呼ばれた旦那様は、恥ずかしそうに笑った。



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