執事の戯言
「では、旦那様。夕食の準備があるので、
私はこれにて失礼いたします」
「ああ、いつもありがとう、斎藤さん」
「勿体無きお言葉、感謝致します」
帰り際、お嬢様に一礼してから、まるで着物を着て歩いているかのように帰っていった。
「で、僕の愛しい娘よ。
何をしたら機嫌を直してくれるのかな?」
書いていた書類などを端に寄せ、掛けていた眼鏡を取りながら優しく微笑む旦那様。
思わぬ人物に遭遇したせいで、向けられるはずだった怒りの矛先も行き場を失っているお嬢様。
既に冷静になられ、ため息混じりに「そう潔くなられると、怒るにも怒れないわよ、お父様」と静かに睨んだ。
「璃愛は、笑った方が可愛いよ」
「話をはぐらかさないでいただけますか?」
はんば、呆れ気味に仰るお嬢様に、旦那様は自分のペースを変えずに小さく笑った。
「提案したのは僕だけど、
話を持ちかけて来たのは
日向くんなんだけどなぁ」
いたずらっ子のように笑いながら、俺を見る旦那様。
当然、お嬢様の痛い視線も俺に向けられる。