矢刺さる先に花開く
物想い


保元の年に起こった戦は、後白河帝側の勝利であった。


経子が聞くところによると、平重盛は『清盛の軍勢は鎮西八郎為朝との戦闘で大きな被害を出し、形勢不利と見た清盛は撤退を指示したにも関わらず、父の制止を振り切って、為朝と戦うため出陣しようとした』という。


(ああ、重盛さま…御無事でいらっしゃったのですね)


と思った経子は一人で赤面した。


(わ、私ったら何を…。あの夜でも、変なことを申してしまったし。いえ、確かに御無事であられるのは良きことですが)


そこまで思った経子は、(やはり一人で)大きな溜め息をついた。


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