矢刺さる先に花開く
官軍へ
夫の無事の帰りに経子はつくづく嬉しく思った。
――ただ。
(御義父上様は…本日も宴にござりまするか)
清盛は、ずっと普段通り…いや、普段よりもお気楽に過ごしているかもしれない。
(今こちらから攻めれば賊軍になってはしまいますが…)
そんなことを思いながら、経子は縁側に座っている夫に声をかけた。
「殿」
「経子。如何した」
「此度は、我が兄が誠に申し訳なき儀を…!」
事の発端は、後白河上皇の近臣・中納言信頼が、義朝に信西入道の首を取るように言ったことだった。
前々から信西入道をよく思っていなかった者たち――同じく上皇の近臣で経子の兄・成親も信頼に従ったのだ。