瑛先生とわたし


幸いにもペットOKのマンションで、私も部屋に入ることができたため、姉さん

が帰宅するまで寝ることにした。

一度目を覚ました透も、私の背にもたれてまた寝てしまった。

どれくらい時間がたったのか、薄っすらと目を開けると、ソファに座った龍之

介と蒼の姿が見えた。

二人の体はくっついて、顔が重なってた。

そういえば瑛と藍もこんなことしてたな、なんて思い出して懐かしかった。

ただ、瑛や藍たちのときより二人が密着していたため、なんとも目のやり場に

困ったが……


”おいこら、龍之介、いちゃつくのもたいがいにしておけよ” と薄目のまま

念じたら、蒼がビクッとして私を振り向き顔を赤らめた。

そうか蒼に伝わったのか。

蒼を見たままニヤッと笑ったら 「バロン、見ちゃダメ」 と言われてし

まった。

そのときの龍之介のあわてようは、今思い出しても笑えるよ。


やがて姉さんが帰ってきて、話し合いがはじまり……

そのあいだ、透は私のそばにいた。

そのとき、透とこの先も仲良くやっていけそうだと思った。


話し合いがすんで、長谷川の実家に帰った龍之介は私を実家に預けた。

翌日、私を引き取りにきたとき蒼も一緒だった。

長谷川のお父さんとお母さんの喜びようと言ったら、それはもうお祭り騒

ぎで 「蒼ちゃんと結婚します」 と龍之介が報告すると、舞い上がったお母

さんは大量に寿司を頼んで、お父さんはじゃんじゃん酒をもってこいと上機嫌

になった。

しかし、いきなり結婚とは思い切ったものだ。

昔の失恋を引きずって、ウダウダしてたのがウソみたいだ。

それだけ龍之介が蒼に惚れたってことか。

まぁ、本人たちさえ良ければ、一足飛びの結婚に何の問題もないことだがね。

なんだかんだで、本当にいい日になった。


今日は、蒼の両親に会いにいったみたいだ。

私は長谷川家で留守番だったが、迎えに来た龍之介の顔がだらしなくなってい

たから、これは上手くいったなとわかったよ。

それから私も一緒に車に乗って、花房家に来たってわけだ。

龍之介の話を聞く瑛の顔も嬉しそうだな。

瑛、龍之介にもやっと春がきたよ……



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