やさぐれ女の純情
ふて寝を決め込んだ咲樹の様子をうかがいもせず、
台所とこたつの間の短い距離を何度か往復してテーブルの上を片付けている。
そんな清久が立てるいつもより小さな足音や、
フライパンに注ぐ遠慮がちな水の音に聞き耳を立てていた咲樹は、
小さな溜め息のあとに聞こえたパチンという音で
部屋の明かりが消されたことを感じた。
「おやすみ」
小さな足音で近づいてきた清久が、
青い縮のこたつ布団から出ている咲樹の側頭部に声を掛ける。
会話のない真っ暗になった部屋でガサゴソと衣擦れの音がしたあと、
咲樹は被っているこたつ布団がゆっくり、少しだけ重くなるのを感じた。
「ねぇ、キヨ。あんたは言っちゃダメなのよ?」
自分の上に掛けられた温もりの残る綿入れをつかみ、小声で呟く。
「何をかね?」
「かわいげがないなんて……彼氏でもないキヨに言う資格――」
「ないのかい?」
「…………そうよ」
「そうかもね」