やさぐれ女の純情
「うふふっ。でもこれ、疑いたくなりませんか?」
「私も疑ったよ。
こんなに素晴らしいものを実際に見ることができるなんて
思ってもみなかったからね」
「ですよねぇ~。これが何の意図もなく自然によって造られたものなんて……」
とても信じられない。
「なんか、理想の模様を墨で描いてあるみたい」
「はっはっは。考えることが同じだねぇ。
私もね、初めてお目にかかった時は、こことか、ここなんかを――」
社長がそう言いながら指で示した場所には、
黒柿ならではの素晴らしい杢目が入っている。
「――擦りたい衝動に駆られてね。堪えるのに苦労したよ」
咲樹は
〝まさしく、そこです〟
と言わんばかりに、紅潮した頬で何度も大きく頷いた。