恋……シヨ？‐武藤 雅晴編‐

塾を出てしばらくしても雨は止む気配もなく、しとしとと静かに降り続けている。


私は武藤くんにかなり接近しつつ、一つの傘の中でドキドキと胸を踊らせながら歩いていた。



「先輩、濡れちゃうからもっと寄ってください」

なんて言われるから、武藤くんに肩が触れそうになる。

緊張で無意識にドーナツの入った紙袋を抱きしめてしまった。



そんな武藤くんは自分が濡れるのも構わず、車道側を歩いてくれるし本当に優しい。

私より少し背の高い武藤くんをチラリと見上げて、やっぱり年下だけど素敵だな、なんて思って口元が緩んでしまった。


──その時。



「あ…っ、先輩！」