今夜 君をさらいにいく【完】


「え?」


「食えよ」


ドキドキしながらもベーコンを口に入れた。

しかし、緊張してしまったせいか、うまく食べられず黒崎さんの指に、ソースが残ってしまった。

すると、左の口角だけ上げていじわるそうに微笑んだ。



「・・・ほら、舐めろ」


そう言って指を差しだす。どうしていいかわからなかったが、私は指示に従った。



「ん、上手いな」


「もう!!!」



満足そうに笑っている。私は恥ずかしくて顔が茹でダコになってしまいそうだ。



しばらくして、食卓に私の作ったブリ大根とひじきの煮物、タコときゅうりの酢の物、黒崎さんの作ったお味噌汁と椎茸のバルサミコキャラメリゼが並んだ。



ブリ大根を食べてみた。柔らかいし、味が染みている。


黒崎さんの方を見ると、箸が進んでいて安心した。



「・・・味どうですか?」


「お前にしちゃ上出来じゃないか?」



フッと笑って、ワインセラーから持ってきたドイツ産のアウスレーゼ トゥロッケンという白ワインを開けて、私のグラスに注いだ。

辛口だったが、少し上機嫌になった私はワインの飲むペースがだんだん早まっていった。



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