今夜 君をさらいにいく【完】


「黒崎さぁん、なんで私の事名字で呼ぶンすかぁ!」


「・・・飲みすぎだ」


そう言って私からワインの入ったグラスを取り上げる。


「あーーぁあ!」


「会社では仕方ないだろ」



黒崎さんは立ち上がり、食べた食器を下げているが、私は酔っぱらってしまって、椅子から立ち上がれない。

この前、もう二度と飲み過ぎないと誓ったはずだった・・・が、時すでに遅しだった。



「ここは会社ではないれすよぉ~安奈って呼んでくださいよぉ」


「・・・」


すると、目の前に来て私の両腕を掴み、椅子から立ちあがらせてくれた。



「安奈・・・」



甘く切ない声が全身をしびれさせる。



「言ったぞ。お前も名前で呼べよ」



黒崎さんの名前・・・


玲人・・・だなんて、藤本さんみたい。


恥ずかしいので横を向きながら呼んでみた。



「れ、玲人さん・・・」


「最初に人に言わせといて、自分が言う時は目を見ていわねぇのな」



冷めた目つきで、私を再び椅子に座らせる。



「ああー言いますぅ、目を見て言います!」


キッチンへ向かおうとしていた黒崎さんを、後ろから抱きしめた。


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