今夜 君をさらいにいく【完】
「いーじゃんこんくらい。ほら、くっつくと暖かいでしょっ」
お酒のせいなのか、体が熱くなってくる。
「だめ・・・私そこのタクシーで帰るから!じゃあね!」
「あっちょっと!」
アユムの顔も見ずに、近くにいたタクシーに飛び乗った。
中野にあるマンションにたどり着いた時は、全身が熱くなっていた。
顔も洗わず、ベットにバタリと倒れこむ。
認めたくないが・・・楽しかった。
笑っている時は玲人の事なんて忘れていた。
あんなに真剣な目で告白されたのも久しぶりだった。
マスターの言葉が頭をよぎる。
でも・・・所詮ホストよ。
私がホストなんかに本気になってどうするの?
笑える。
その日はお酒のおかげか、ぐっすり眠ることができた。
数日間、私は無我夢中で仕事に専念していた。玲人の事を考えないようにと必死だった。
でも・・・二人がたまに影で笑い合っている事は知っていた。
それを見ると、心がえぐり取られるような、どうしようもない気持ちになる。
玲人の隣にいるのはまぎれもなく私じゃなく、あの子なのだ。
嫉妬という、醜い気持ちが私を包み込む。こんな自分が嫌だった。
もうこんな思いを抱えていたくない。