今夜 君をさらいにいく【完】
他の事を考えている事を悟られたのが、黒崎さんが怒鳴る。
「・・・おい、聞いてんのかっ!?」
ビクッと体が硬直した。
「・・・だから甘ったれは嫌いなんだよ」
「え?」
「お前ここに入る前、美容の専門行ってたんだろ?」
あ、履歴書か・・・
でもなんで今その話・・・?
「途中で辞めたんだって?親のありがたみもわかんねー甘ちゃんじゃねーか。俺はそういう何でも中途半端に投げ出す奴が一番嫌いなんだよ」
さすがに胸に突き刺さった。
まさか黒崎さんが私の事そんな風に思っていたなんて。
イライラしているのか、黒崎さんの腕を組んでいる片方の指が規則正しくリズムを切る。
「す・・・すみませ・・・」
涙が出そうだった。
今まで黒崎さんに何度も怒られてきたが、涙を見せるのは初めてだ。
その時、センターと繋ぐドアが開いた。
開けたのは藤本さんだった。