今夜 君をさらいにいく【完】


小走りで駆け寄ると、「ちょっといいか」と、別室に連れて行かれた。


センターとドア一枚で繋がっている会議室には、長机とパイプ椅子がいくつかと、ホワイトボードが置いてある。


声が重なり合うセンターとは違い、静けさがあり、黒崎さんと2人だという事に緊張感が増して行く。


腕を組み、窓に寄りかかったまま黒崎さんが口を開いた。



「桜井、お前やる気あんのか?」



私に問いかけるその目は、いつもより厳しく、突き放したような鋭い目つきだった。



「・・・あります・・・」


やる気は十分ある。
でも夜の仕事の疲れがいつも残ってしまい、細かいミスを連発してしまうだ。


わかっている。わかっているのに同じ事を繰り返してしまう。



「お前のしたミスは、もう一度自分で確認すれば間違わないようなミスなんだぞ。俺、前にも言ったよなぁ?」




「・・・はい・・・つい、慌てると確認すること忘れてしまって・・・」



俯いたままの私に、黒崎さんは更に冷たい言葉を投げかける。



「はぁ。何度同じ事言わせれば気が済むんだよ。カタログも出たばっかで恵里香も俺も人手が欲しい位忙しいんだ。こういう小さいミスはなるべくしないでもらいたい」




恵里香・・・藤本さんの事、恵里香って呼ぶんだ・・・
やっぱり2人は・・・



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