今夜 君をさらいにいく【完】
優しかった口づけが徐々に激しさをましていき、飯田さんの両手は、私の至る所を感じさせた。
濃厚なキスはお酒の味がした。
延長時間も終わりに近づいて来た時、彼が言った。
「サナちゃんは外で会えないの?」
きた。おきまりの客のセリフ。
「はい。同伴以外は禁止されてて・・・私も飯田さんともっと仲良くなりたいんですけど・・・申し訳ありません・・・」
やんわりお断りすると飯田さんは残念そうに笑った。
「そうか、残念だな。俺サナちゃんの事すごい気に入っちゃったんだよね、じゃあまたお店に来てもいい?」
そりゃもちろんですとも!!
むしろそっちの方が嬉しいですから。なんて言えるはずもなく。
私が笑顔で頷くと、飯田さんは自分の名刺の裏に携帯の番号とアドレスを書き込んだ。
「いつでも連絡して」
イイ感じにほろ酔いになった飯田さんを出口で見送ると、またしても店長が近寄ってきた。
「さすがサナちゃーんっ60分延長ありがたいねぇ」
「時給早く上げてくださいよ?」
満面の笑みの店長に冷たくあしらう。
この店はキャバクラのように指名制度があって、指名が多ければ多いほど翌月の時給があがる。