今夜 君をさらいにいく【完】


夜中の2時。


私は帰り支度をして受付で給料をもらった。


時給6000円の私は今日だけでも指名延長合わせて4万以上稼いだ。


お金を財布に入れて勢いよく店を出る。


このまま飲みにでも行きたい気分だけど・・・明日も仕事だ。



と、ここまでがあたしの夜の顔。



普段は・・・通販会社で派遣社員として働いているただのOL。


朝6時に起きて準備して会社に行き、夜は週4日でこのセクキャバで働いている。
その繰り返しの毎日。

でも決して会社の人間にバレないようにしなければならない。


サングラスをし、髪を束ねて帽子を深くかぶる。
人通りの少ない道を選んで駅まで歩く。


なぜそこまでして夜、働かなくてはいけないのか。




私の人生は一年前、180度変わってしまった。






私には美容師という、昔からの夢があった。



そのために理容美容専門学校へ通っていたあの頃。

希望に満ちあふれていた日々に突然終止符が打たれた。


理由は父親の蒸発。


母は私が中学生の時病気で亡くなり、一家の大黒柱だった父はそれから腑抜けになってしまったのだ。

ギャンブルが好きで、競馬で多額の借金をかかえた。


< 6 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop