今夜 君をさらいにいく【完】
夜中の2時。
私は帰り支度をして受付で給料をもらった。
時給6000円の私は今日だけでも指名延長合わせて4万以上稼いだ。
お金を財布に入れて勢いよく店を出る。
このまま飲みにでも行きたい気分だけど・・・明日も仕事だ。
と、ここまでがあたしの夜の顔。
普段は・・・通販会社で派遣社員として働いているただのOL。
朝6時に起きて準備して会社に行き、夜は週4日でこのセクキャバで働いている。
その繰り返しの毎日。
でも決して会社の人間にバレないようにしなければならない。
サングラスをし、髪を束ねて帽子を深くかぶる。
人通りの少ない道を選んで駅まで歩く。
なぜそこまでして夜、働かなくてはいけないのか。
私の人生は一年前、180度変わってしまった。
私には美容師という、昔からの夢があった。
そのために理容美容専門学校へ通っていたあの頃。
希望に満ちあふれていた日々に突然終止符が打たれた。
理由は父親の蒸発。
母は私が中学生の時病気で亡くなり、一家の大黒柱だった父はそれから腑抜けになってしまったのだ。
ギャンブルが好きで、競馬で多額の借金をかかえた。