今夜 君をさらいにいく【完】
「思い出したよ。君、夜のお店で働いてるだろ?」
体の血の気が引いて行くのがわかった。驚いて部長の顔を見ると、ニヤニヤと笑っている。
私はその顔から目が離せなかった。
手足が震えてくる。
「え・・・いえ・・・」
そう言うのが精いっぱい。否定する言葉も見つからなかった。
「隠さなくてもいいよ。あれからずっと気になってたんだけどね・・・君のそのほくろで思い出いたよ」
部長が指差したのは私の首に二つ並んでいるほくろだった。
「まさか同じ会社で働いていたとはね。この前は楽しい時間をありがとう」
もうごまかすことはできない。
「ぶ、部長、この事は・・・」
私が言いかけたのと同時に4階に着いてしまい、エレベーターが開き、他の社員の人達に出くわした。
部長がその社員達に挨拶をしながら、エレベーターを降りて歩きだす。私は急いで部長の後を追った。
「あのっ・・・部長!」
その瞬間、部長は振り返り、私の腕を掴んで給湯室の中へ入った。