溺愛カンケイ!

ようやく離れた唇…。
名残惜しそうに二人の間を繋いでいた透明に光る糸がプツリと切れるのを乱れた息を整えつつ虚ろな瞳で眺めていた。

拓也さんの唇がいやらしく濡れていて、それを手の甲でグイと拭ったあと私の唇を右手の親指で拭う。


「ここが会社だって事を忘れてしまいそうだな」

拓也さんはハハッと呑気に笑う。

雰囲気に流されて自分からあんな激しいキスをしたなんて……恥ずかしさが込み上げる。

俯いてた私に

「花音、悪いがまだ仕事が残ってるから今日は送ってやれない」

眼鏡をかけ直しながらすまなそうに言う。

「そんなの気にしないで下さい。ちゃんと帰れますから」

「そうか。なら気を付けて帰るんだぞ。絶対に変な奴についていくなよ」

「なっ、行きませんよっ」


子供扱いはやめて欲しい。


――…ガチャ

資料室のドアを開け、一応誰かいないかキョロキョロと確認し、私はエレベーターホールに拓也さんは営業フロアに戻っていった。



明日どうなるんだろう。
その夜、緊張と不安でなかなか眠れなかった。

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