シークレット ハニー~101号室の恋事情~
さっきの部長との会話を思い出す限り、なんだか野田の事だけが直接的原因じゃない感じがするんだけど、私の勘違いだろうか。
見つめる先で五十嵐さんは「ああ」と微笑んで。
「ごめんね。実は俺の希望だったんだ」と平気で言いのけた。
「希望って……っ」
「いや、野田のせいで葉月が異動になるって話を聞いて、だったら葉月の今までの仕事が役に立つ課にって頼みはしたけど。
嫌だった? 監査課」
「あ、なんだ……。異動自体は決まってたんですね。
じゃあ異動先が監査課になったのも、人事部がきちんと決めた事なんですよね?」
確認するように言うと、五十嵐さんは「心外だな」と困り顔で笑った。
「俺が自分のために葉月を監査課に異動させたとでも思った?」
「……だって、コネ入社とか聞いた今の流れで異動の話が出たら誰でもそう思いますよ」