桜涙 ~キミとの約束~


──けれど。


「え、いないんですか?」


リクの家。

少し古めな作りの一軒家である玄関の前で、私は肩を落とした。


「ごめんね。せっかく来てくれたのに」


私の前に立ち、申し訳なさそうに眉毛を下げているのは、休日で家にいたリクのお父さん。


「そっかぁ。突撃失敗しちゃいました」


アハハと笑うと、リクのお父さんは少しシワのあるどちらかといえば強面の顔にほんのりと笑みを浮かべた。


「陸斗から少し聞いてるけど、元気そうで安心したよ」


退院おめでとう。

そう言われて、私も微笑し「ありがとうございます」と伝えた。


「あの、リクからどこに行くとか聞いてますか?」


予定がないって聞いてたけど、もしかしたら何か入ったのかな?

尋ねると、リクのお父さんは首を横に振った。


「ちょっと出てくるとだけ言って出て行ったよ」

「そうですか……」


仕方がない。

先に奏ちゃんを驚かしてこようかな。

そう思った時。


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