桜涙 ~キミとの約束~
「……いいの?」
思わず、心の声が音になった。
奏チャンは困ったように眉を寄せ、口元に笑みを漏らす。
「よくないけど、陸斗だから……いいよ」
正直すぎる答えと共に吐露された奏チャンからの信頼。
「愛してるよ、奏チャン」
「またそうやって茶化すなよ。僕は──」
「わかってる。大丈夫だよ。オレ、奏チャンに負けないくらい、小春のこと大事だから」
だから、迷っても、立ち止まっても。
ちゃんと、小春の手を離さずに、一緒に歩いていく。
奏チャンはどこか複雑そうに、けれど満足したように頷く。
すると、奏チャンの向こう側から、親子が歩いて来て、オレたちの座るベンチの隣にある、もう一つのベンチに腰を下ろした。
母親と娘さんの二人。
娘さんの方はまだ小さくて、言葉もたどたどしい。
「ママ、おなかしゅいたー」
「おうち帰ったらご飯だから我慢して」
「しゅーいーたー」
むくれる女の子の瞳が、ふとオレたちを映す。
そして、オレよりも女の子側の方に座っている奏チャンに笑いかけた。