もうひとつの恋
他に何も言いようがなくて、そう言って電話を切ろうとすると、美咲さんが慌てて俺を引き止める。


「ちょっ!待った!
桜井ぃ、ごめんて
本当に応援してるんだからさ!

緊張……ほぐれたかなぁ?
明日、頑張ってね?成功を祈ってるから!

んじゃ!おやすみ~」


ガチャ!ツー……ツー……ツー……ツー……


言いたいことだけ言うと、美咲さんはとっとと電話を切ってしまった。


思考が停止しそうになりながら、美咲さんが言った言葉を思い返す。


『緊張……ほぐれたかなぁ?』


確かにそう言った。


またか……


顔の筋肉がふっと緩む。


知らない間に、また俺は彼女に励まされてたみたいだ。


たぶん俺が緊張して眠れないのを見越して電話をくれたんだろう。


いつも彼女は俺に気を使わせないように、上手にリラックスさせてくれる。


美咲さんの分かりづらい優しさに触れながら、俺はゆっくりと体の力を抜いて、静かに眠りに落ちていった。


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