ロストバージン·レクイエム



ベンチに座ったものの何を話すという事もない。

「もう真夏だね」
とか
「明日も仕事やだなー」
とか。

15分あるとはいえ、正直電車の時間が気になった。

時計を見る私の様子に気づいたのか、人もまばらだというのに私にしか聞こえないような大きさの声で川島君が言った。



「梅田さんって彼氏いないんですよね」


「うん」



おぉ!これは「来る」か!?


こっちを見ずにさらに続けた



「……俺じゃ駄目ですか」
「いいよ」



きたーっ!

川島君は手で顔を覆って大きく一つ深呼吸をした。

もうちょっともったいぶって答えた方が良かったかな?でも電車が。

「そういうことは酔っ払ってないときに言ってほしかったなー。また今度言ってね」

「はい。それじゃまた。気をつけて」


そう言って別れた。

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