ロストバージン·レクイエム

「落ち着いた?」


なだめるように背中をさすって、出来るだけ優しく抱きしめた。

汗だくだ。私も。


「うん。」

「今日はもう終わり?」

「車じゃ嫌でしょ」


別にいいよ、と思ったけど言えなかった。


「そうだね。……じゃ、帰ろうか」


身体を起こすとガラスが曇って周りが見えないことに気づいた。

2人の熱の証。
少し気恥ずかしい。

帰り際、離れて停まっている他の車が目に入った。

あの車の窓も同じように曇っているのだろうか、なんて下衆な考えがよぎる。


その日初めて別れ際にキスをした。

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