朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「暁、これ、由良が寝る前に食べろって」


 柚は無邪気な顔をして、山芋を蒸してあんをかけたものを手渡した。


「また山芋か……。いらぬっ!」


 暁が山芋を突っ返すと、柚は無理やり暁に持たせた。


「由良がせっかく作ってくれたんだ。嫌いじゃないなら食べろよ!」


 柚に怒られて、暁は渋々、椀と匙を手に取った。


「柚が余に、あ~んと言って食べさせてくれたら、余は美味しく食べられると思うのだが」


 暁は期待に満ちた目で柚を見つめ言ってみた。


すると柚は、


「嫌だよ。子供じゃないんだから一人で食べろ」


 と一蹴された。


暁は黙って山芋を食べた。


 その間柚は、手首をコキコキ鳴らしたり、軽いストレッチを行った。


明日から貴次の下ではあるが、久々に稽古が受けられるのである。


柚はだんだん楽しみになってきた。


「そういえば……」


 山芋を食べ終わった暁が話を切り出した。
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