朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「今日、深紫色の衣を着た不審な男が宮内をウロウロしていたらしい」


「え?」


 柚は心当たりがあったので、ピタリと動きが止まった。


「若く目鼻立ちが整った男らしいが、身分関係なく道行く者に礼をして歩く、変わった男らしくてな。

あまりにも堂々としているから、密偵や敵ではないだろうと貴次は言っていたが、頭のおかしな奴かもしれぬから、出歩く時は柚も気を付けるように」


 柚はハハっと乾いた笑みを浮かべて、曖昧に頷いた。


(それって、思いっきり私のことじゃないか~! 不審者ってバレてたのか!)


 柚は背中に嫌な汗がだらだらと流れた。


今後はもっと気を付けようと心の中で誓った。


 この話には暁の知らないもう一つ裏の話があった。


貴次は変わった男が宮内を歩いていると聞き、探りを入れるためにその男を探した。


そして見つけたのが柚だったので、暁や周りの者達には、密偵や敵ではないが頭のおかしな奴かもしれないと報告を入れたのだった。


「さて」
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