朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
第二十一話 消えた妃
衣を雑に整えて、柚は自分の部屋へと走った。


前屈みで走っていたので、周りは衣がおかしくなっていることに気付かなかった。


 部屋に到着し、ようやく息を整えると、衣がぐちゃぐちゃになってさらしが破かれた状態を見て、さっきのことが現実だったのだと痛感する。


まだ胸に残る違和感。いまだに恐怖が残っていて心臓が悲鳴を上げていた。


「柚様? お帰りですか?」


 由良が部屋に入ってくると、柚の姿を見て息を飲んだ。


「どうなされたのです!」


 由良は真っ青になって座り込んでいる柚に近寄り膝をついた。


「ごめん、今は何も言いたくない」


 柚の憔悴しきっている様子に、由良は心配そうに眉を顰め、立ち上がった。


「分かりました。何も聞きません。

湯屋を用意しますから、身体を温めて着替えましょう」


 柚はコクリと頷くと、由良の言うことに従った。


湯を浴びて着替えると、まるで何もなかったかのような気持ちになった。
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