朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
こんな気持ちになったのは初めてだった。


柚と出会う前までは、沢山の女性と肌を重ねてきたし、接吻ごときで緊張している自分に驚いていた。


 暁は、ゴクリと喉を鳴らした。


顎を上げて、目を閉じている柚の顔はとても可愛かった。


柚の両肩を掴んだ手に力が入る。


(何を躊躇(ためら)うことがあるのだ。

柚が余の接吻を求めている。それにここは、滅多に人が出入りせぬ場所。

ここで接吻したとて、誰に見つかることもない。

そう、しばらくここに二人でいても見つからぬのだ。

この室内には余と柚の二人きり。ここで何をしたとて……)


 柚の顔に自分の顔を近付けていっていた暁の動きが止まった。


「駄目だ!」


 暁は慌てて顔を離した。


突然の暁の言葉に驚いて柚は目を開けた。


暁は柚から顔を背けるように背を向いた。


「そうだ! 余にはまだ仕事があったのだ! もう時間がない。すまぬが先に行ってるぞ」


 暁は逃げるように書物庫から飛び出して行ってしまった。


後に残された柚は唖然とするばかり。
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