朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
そんな時、柚の視界の隅に何かが動く気配がした。


稚夜が抱えていた大きな箱が一瞬動いたのだった。


「なあ稚夜、あの箱には何が入ってるんだ?」


 すると稚夜は、肩をビクっと上げ、柚の身体から勢いよく離れた。


そして、慌てて箱に駆け戻り、大事そうに抱え上げた。


「何でもありません。この箱のことは忘れてください」


「いや、忘れろって言われても……」


「あっ! 大変だ! もう勉強の時間です。それじゃあ姉さま、また会いましょう!」


 稚夜は慌てた様子で走り去ってしまった。再びポツンと残された柚は、しばらく呆気に取られていた。


(なんだよ稚夜まで。久しぶりに会ったっていうのに兄弟揃って薄情だな)


 柚は癒されに行ったのに、逆にもんもんとしたものが残ってしまった。


仕方ない、今日はこのまま帰ろうと、部屋に向かっている時のことだった。


更なる災難が柚を襲った。


 部屋に帰っている途中のこと。


柚の部屋は後宮内にあるといっても、ほぼ隔離された場所にあるので、後宮の女たちがいる場所を避けて通れば女たちに会うということはほとんどない。


しかし、今日はなぜか、御供を三人引き連れた豪華な衣を纏った女性が、柚の通り道を歩いてくる。
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