朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
一方、柚の後を必死で追った暁だったが、柚に部屋の鍵をかけられ、中に入ることができずに途方に暮れていた。


「柚っ! お願いだ、開けてくれ」


 鍵をかけたけれども、開けられてしまうのではないかと恐れた柚は、手でしっかりと扉を閉めながら、暁の声を聞いていた。


切実さは伝わってくるけれども、柚の心は激しく動揺し、暁を許せる気持ちには到底なれなかった。


「嫌だ! 暁になんて会いたくない!」


「柚、あのような状況になったことを説明させてくれ。柚は誤解をしておる」


「いい訳なんて聞きたくない! 帰れ! 暁の顔なんて見たくない!」


 無理やりにでも開けようかと思っていた暁だったが、柚の心はすでに頑なで受け入れてもらえる余地がないことを知ると、扉から手を放した。


 暁は肩を落とし、唇を噛んだ。


柚に拒絶され、大嫌いだと言われたことが、かなり尾を引いていた。


しかし、目を閉じて大きく深呼吸をし、気持ちを落ち着かせ、語りかけるような口調で言った。
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