朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「月島先輩、とってもかっこ良かったです!」


「はは、ありがとう」


 月島先輩、と呼ばれた少女達の中心にいる人物は、彼女らの熱い眼差しを避けるように、タオルで額の汗を拭った。


渡された誰かのタオルを安易に使ってしまうと、後で問題が起こることは経験上分かっていたので、無難に自分のタオルを使う。


もちろん水も渡されたものではなく、自分で買ったペットボトルの水を飲んだ。


「私、月島先輩にならファーストキス奪われても構わないって思いました!」


 率直すぎる言葉に、柚は飲んでいた水を吹き出しそうになった。


冗談かと思ったら、言った本人は両手を顎の下に組み、至極真面目な目付きなので苦笑いをするしかない。


(私、女なんだけど……)


 同じ女子高に通っているので、柚が女であると知らない者はいない。


それでも宝塚並みの熱い視線を受けるので、心で呟いた言葉を仮に発したとしても、誰の心にも響かないのであった。
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