朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
白地の布に全国高等学校剣道選抜大会と書かれた横断幕が掲げられている体育館の中から、足早に外に出てきた人物がいた。


 月島 柚(つきしま ゆず)、一八歳。


此度の剣道大会の優勝者である。


彼女は本日のスターであるにも関わらず、怯えたような顔付きで始終後ろを気にしながら身を隠すようにして出てきた。


その出で立ちは、先程の凛々しい袴姿とは変わって、女子高の制服姿である。


スレンダーな身体なのでプリーツスカートから覗く白くて細い脚はとても綺麗だ。


しかし顔を見ると、どこか違和感を覚えてしまう。


黒髪のショートカットに制服姿は、元気良く明るい印象を持つが、無理やり着せられている感がどことなく漂っている。


例えるならば、女顔をした美少年が女子高生の制服を着て歩いているような違和感だ。


パッと見は着こなしているように見えるが、よく見るとなんだかおかしいな、この子男の子なんじゃないのかと周りから訝しげな目で見られてしまいそうなレベルだ。


実際街中を歩いていて知らない人が「あれ、男じゃね?」とこっそり話しているのが聞こえてしまった経験は一度や二度ではない。


本人は正真正銘の女なので非常に迷惑なのだが、学校の規則なので制服を着ないという選択はできなかった。
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