朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「……は?」


「今すぐ帰りたいのなら、今すぐここで死ねばいい。

そうすれば魂が元の世界に帰り、またあの公園から何事もなかったかのように動きだす。

一端死ねば、この世界のことは全て忘れ去るから、何の問題もない」


「死ねばいいって、そんなこと言われても……」


「死ぬのはいつだっていい。

よぼよぼの婆さんになって寿命を全うしても、お前の魂は元の世界に戻り、この世界のことも忘れ、十八歳の今の身体や思考で再び生きることができる。

俺様は別名不死鳥と呼ばれ、もう一つの命を生み出すことができる。

俺様は、いわばお前にもう一つの命をくれてやったんだ。ありがたく思え」


 柚は、あまりのことに狼狽えることしかできなかった。


(死ぬ? 自分で? そんなこと、できるわけないじゃないか。それに、今私が死んでいなくなったら、暁はどう思うんだろう)


 戸惑い黙り込む柚に、朱雀は不敵な笑みを浮かべた。
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