エンドレス・ツール
「いまだに引きずってるんだ、彼女のことを。自分から別れたくせに」


そう言った高橋くんは、顔から表情をなくした。口元だけがわずかに動く。


「それほど、好きだったってことでしょ?」


言いながら、あたしは溢れるような思いに耐えていた。


元カノに嫉妬している場合じゃないのに。


「引きずるだけならまだましだよ。でも、しょーちゃんは、その寂しさを埋めるために、俺ですらやらないことをしだした」

「それが……」

「しょーちゃんは、それから、酔うたびに女を抱くようになった」


息が詰まりそうだった。


呼吸が苦しくなって、あたしは喉元に手を当てる。


その時、喉元に、大きい手の感触が蘇ってきた。


……翔さん?


「最悪やな」


なつはぼそりと呟いた。


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