エンドレス・ツール
「しょーちゃんには、三年付き合っていた彼女がいた」


やけに重々しい口を開いた高橋くんはぎゅっと唇を噛み締めていた。


苦々しい思いを抱えているのかもしれない。


「すげーラブラブだったよ。周りで見ていても妬けるくらい、お互いを思っていて」

「何、惚気?」

「なつ、黙って」


あたしはなつに口を挟んだ。


横のなつは反論しようと口を開いたけど、口から何も言葉は発しなかった。


「俺も、すげー羨ましかった。当然肉体的な繋がりはあったよ。でも、しょーちゃんはそんなこと一切言わなかったし、男女の関係っていうより、夫婦って感じかな」

「普通、誰にもそういうこと言わないと思うけど」


「しょーちゃんはね」高橋くんはなぜかふっと口を綻ばせた。


「別れた理由は、浮気とか喧嘩したとかそんなドロドロしたのじゃないんだ。高校卒業して彼女が東京の有名私大に行くことになって、しょーちゃんから言ったんだ。縁があったらまたいつか会おうって。かっこいいでしょ」

「かっこいいね。高橋くんが言ったら気持ち悪いけど」

「俺としょーちゃんじゃ、イケメンのタイプが違うもん。でも、しょーちゃんは今それを引きずってる」

「……どういうこと?」


それ、あたしを抱いたことと関係あるのか?


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