エンドレス・ツール
「そんなにいいかねえ。大山誠一」


兄貴がトーストをかじりながらパソコンを覗き込んだ。


「ちょっと、座って食べてよ」

「俺の方が断然いい男だと思うけどね」

「じゃあ、事務所に履歴書送ってみれば? デビューどころか、事務所にすら呼ばれないでしょうよ」

「いや、その前に23の男を今更育成しようと思わないでしょ」

「誠ちゃんをよく見ないからわかんないんだよ。兄貴より何倍もいい人だから」

「わかってねえな、りりは。テレビなんて嘘ばっかさ。歌って踊って芝居してるのを見たって、そいつの本質なんかひとかけらも表せてねえんだから。裏表の表よりももっと薄っぺらい世界だよ、芸能界ってのは」

「かっこいいこと言ったつもりなんだろうけど、それ芸能界の人達に失礼だよ」

「要するに、りりは騙されてるってことだ、薄っぺらい世界にな」

「だから兄貴、かっこいいこと言ってるつもりだろうけど、少しもかっこよくないからね」


あたしは動画を一時停止させてため息を吐いた。


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