エンドレス・ツール
「グレープフルーツとライムとレモン。どれがいい?」


翔さんが冷蔵庫の覗きながら聞いてきた。


「柑橘系ですね」

「柑橘系が好きだね、基本」

「レモンください」

「じゃあ俺も」


レモンのチューハイを二本持ってきた翔さんは、再びあたしの横に腰を下ろした。


「そんな端っこでいいんですか?」

「ん?」

「あたしが端っこだからって……」

「俺も端っこ好きだからいいの」


たぶん、これは翔さんの優しさなのだろう。


にこにこ笑いながらあたしの隣でぐびぐび飲んでいる翔さんに、なんだか安心してしまう。


端から見たら、あたし達はおかしいのかもしれない。


わざわざ部屋の端っこで男女二人きりで飲んでいるなんて。


何が起こったって不思議ではないのだ。


でも、翔さんとだと安心する。


密着しそうなこの距離が心地よい。


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