重なる身体と歪んだ恋情
廊下で立ち止まりあたりを探る。

当然、司の姿はどこにも無くて。

部屋に入り窓際のスイングチェアに腰掛けて小さく息を吐き出す。

司が千紗に同情するのは分かりきっていた。

彼は私の性格をよく知っているのだから、そして面倒見のいい司のことだから放っておけないだろう何てことも簡単に想像できる。

そんな司だからこそ、千紗に付くように命じた。

彼女が司に惹かれるのは予想外だったが。

もしもここに司がいたのなら、司の目の前で彼女を犯してもよかったのに。

あいつの前で彼女を奪う。

その行為に言い様の無い興奮を覚えるなんて、


「幼稚だな」


苦笑しつつシャツのボタンを外した。

シャンパンの飲みすぎと睡眠不足のせいにしておこう。

立ち上がりベッドに身体を沈めて瞼を落とす。


今夜はきっと、

夢を見ることなく眠れるだろう。



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