重なる身体と歪んだ恋情
けれどそれ以上はなにもなく彼は屋敷を出て会社へ。


「行ってらっしゃいませ」


と見送りをして小さく息を吐いた。

タイが息苦しい。

右の人差し指で少し緩めると弥生の視線を感じて。


「何か?」


そう聞く私に「なにも」と答えるとそのまま屋敷に入っていった。

緑川も奏だが、この弥生という女も何を考えているのか、表情がない。

だからこそ奏様のお世話が出来るのだろう。

ポケットの中から懐中時計を取り出す。

もうすぐ7時か。

そろそろ千紗様を起こさねば。

といって、彼女に今日一日の用事があるわけではない。

けれど規則正しい生活を。

なんて。


「すっかり子守りだな」


思わずそう呟いてしまった。

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