重なる身体と歪んだ恋情
私は千紗様の使用人で子守で英語の教師で。


「ねぇ、小雪。ここをこうやって結ったら? ほらこの本にあるように」

「難しいですよ? もう少し千紗様の髪が長かったら」

「なら小雪なら出来るんじゃない?」

「えっ? む、無理です!」

「大丈夫! 私が――!」

「無理ですってば!」


小雪は使用人で、学友のように。


「郁、この間のハーブってどうなったの?」

「やっぱり梅雨に天日干しは無理があります」

「あ」

「なんとカビが!」

「きゃあ!」


郁にいたってはまるで幼馴染ようで。


千紗様は千紗様なりにこの桐生家での居場所を見つけたようで。

季節は梅雨だけれども気分は悪くない。

そんな毎日を送っていた。
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