重なる身体と歪んだ恋情
ほんとうにお子様で、だけどどこか背伸びして。


「あ、そうでした」


そのまま部屋から出ようと思ったのだけど、どうしても伝えたくて。

彼女に背を向けたまま足だけ止める。


「昨日は折角お見舞いにいらしてくださったのに失礼しました。けれど、お昼にパンを食べてその後薬を飲んで、それからやっと熱が下がりましたのでもう千紗様にご不自由はおかけしませんから」


素直に「ありがとうございます」でいいのだろうが、なんとなく。


「……それはよかったわ。如月がいないと英語の勉強が出来ないもの」


返ってくる声に背を向けたまま頭を下げて彼女の部屋を後にした。


それからは普通の日々を。

朝食には紅茶を、午前のお茶の時間にはハーブティとクッキー。

それを口に運びながら英語の勉強。


「少しは聞き取れるようになってきましたね」

「本当!? 自分でもそうかなって思ってたの」

「でもまだまだです」

「……」


唇を尖らせる姿は本当に愛らしい。

昼食を終えると彼女は郁のところへと足を向ける。

そこにある花を手折ってはいけばなにしたり、時には押し花を楽しんだり、


「今日は郁とハーブティーを作ってみたの。上手くできるかしら?」


今日はそう言うことらしい。
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