重なる身体と歪んだ恋情
「それにしてもこんなところで会えるなんて!」

「えぇ、本当に」


由香里さんは本当に嬉しそうに笑ってみせる。


「旦那さま、本当に素敵な方ね。会社経営者の方と結婚と聞いていたからもっとお歳の方を想像してたわ」


なんて。

そうね、彼は年齢よりも若く見えるかも。でも、


「9歳離れてるわ。かなり年上よ?」

「あら、私なんて20歳も違うわ。9才差なんて小さなことよ」


そう言ってケラケラと笑う由香里さん。

あぁ、彼女は幸せな結婚生活を送っているのね。

彼女の纏う雰囲気から自然とそう感じ取れてしまった。


「あ、旦那様だわ。あなた!」


子供のように大きく手を振って彼女が呼んだのは、


「こちら女学校時代のお友達で、えっと桐生千紗さん」

「そうですか、初めまして。仙道と申します」


髪は白髪交じりで同じ色のひげも蓄えた男性。

とてもでは無いけれど見た目だけでは素敵だとか端正な、とはいえないよな顔立ち。

だけれど、その笑顔はとても優しそうで、


「初めまして、桐生です」

「由香里と友達とは! こんな麗しいお友達がいるとは聞いてなかったぞ?」

「あら、浮気なさる気?」

「まさか!」

「したら家をでますから!」

「ない! 絶対に無い! 俺には由香里が一番だと言ってるだろう?」

「もうっ! ちょっとあまりくっつかないで!」

「由香里ぃ」


とても仲がよくて幸せそうで。


「仲が、よろしいのね」


思わずそう口にすると、


「あら、だって新婚ですもの。千紗さんのところもそうでしょう?」


と言われて。

私は苦笑いしか出来なかった。








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