重なる身体と歪んだ恋情
以前、この家の借金を帳消しにしたときも変だと感じてた。

あまりの資産の少なさに。

千紗の兄が継いでからというもの、この家の資産を食い潰しているのは分かっていた。

だからといってこんな短期間にこの家の資産を食い潰すなんてこの馬鹿息子に出来るのか?

そう思っていた。

土地にしてもそうだが、そんな簡単に買い手のつくものではない。

金を作るより使うほうが簡単だとしても。

桜井は落ちぶれてしまっても元公家。

まだ資産があったっておかしく無い。

そんな私の考えは間違ってなかったらしい。

土地の権利書をパラパラとめくってみる。

場所は少し離れた山間のほう。これはそれほどの価値は無いかもしれない。

けれど国債になれば話は別だ。


「5分(5%)金利付の国債ですね」


如月の声に「みたいですね」と答える。

買い付け額は500円程度。

だとしても今なら600円は越えているはずだ。

あと、価値は無いといっても土地だって売れる。

そのほかにも祖父名義の通帳が2通。

これを全部現金にしてしまえば――。


「この家、買い戻せるかもしれません」


私の声に「え?」と小さな千紗の声が聞こえた。

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