重なる身体と歪んだ恋情
その声すら飲み込むように唇を重ねる。

ほんの少し、私から逃げようとする彼女の身体。それでも私を突っぱねて逃げないのは、この手に真っ白な包帯があるから。

苦しそうに僅かな隙間で息をして、私の唇を受け入れる。

彼女の手は、ベッドのシーツをギュッと掴んでいた。


「嫌なら、嫌とおっしゃって構わないのですよ?」


耳元で小さく囁くと、彼女の身体がビクリと震えて、それから小さく首を振る。


「……嫌だなんて」


そう返し、包帯を巻いた手に彼女は自分の頬を預ける。

だから私も彼女の頬にあるガーゼをそっと撫でた。


「なら、貴方が私の服を脱がせてください」

「え?」


大きく開いた彼女の瞳が私を移す。


「この手は何かと不便なんです」


わざとらしく包帯を巻いた手を見せると、彼女はコクリと喉を鳴らした。

そして、


「わ、かりました」


震える手で私のシャツのボタンに指をかける。

ぷつっとひとつずつ外していく音が聞こえる。

すべてのボタンが外されて、私の身体が見えたのか彼女は目を逸らした。


「まだですよ。これでは何も出来ない」

「あ……」


意味が分かったのか、声を上げるけれど彼女の指は宙に止まったまま。


「千紗」

「――っ」


彼女の名前を呼んで、彼女の手をズボンのボタンに導いた。

ビクッと反応しながらも逆らったりしない。

そして震える手つきでボタンを外し始めた。
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